ひでシスのめもちょ

今度は箱根登山鉄道に乗ってみたいと思っています

阿部洋一『 #それはただの先輩のチンコ 』、あるいは切断されたペニスをめぐって

こんにちは。男根妄執者のひでシスです。

 

阿部洋一の『それはただの先輩のチンコ』が先日公開されました。男性からペニスを切り取っても再生するこのに気付いた女子たちが、例えば先輩のペニスを切り取ってペットにしてみたり、妄執的に様々なちんこを集めてバスタブ一杯に貯めてちんこに埋もれてみたりする話です。

webcomic.ohtabooks.com

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阿部洋一といえば、セーラー服を着た女子が顔を赤らめながら股間に生えた蛇口を「ガチャガチャ」と音を立てさせて公園の水道の蛇口と絡ませるシーンですとか、そういう男根を想像させる描写をよく使ってました。ぼくとしてはこの漫画を読んで「ついに来たか~~」という感じです。

 

切断されたペニスをめぐって

「ペニスの切断」と聞くと、最初に頭に浮かんでくるのは去勢不安ではないでしょうか。歯の付いたヴァギナとかのイメージです。ただ、阿部洋一の『それチン』については、エディプスコンプレックス的な去勢恐怖に着眼すると論点がぼやけてしまいます。

 

阿部洋一『それチン』で注目すべきは、「強い男性像」から「性的な男性の部分」を切断し、弱い(踏めば潰れてしまうような)性的なオブジェクトとして、性の主体となった女性の所有物とする、という構造でしょう。

性的に強いこと・力が強いことは古来から一体のイメージとして「強い男性像」として捉えられてきました。しかし相対主義と男女平等の進んだ現在においては、「男性の力強さ=性的な主体性」の等式は徐々に地位を失い、今やむしろ現実社会において弱い男性に対して自らを勇気づけるファンタジーとして供給されるのみという状況に落ちぶれています。では女性が性的な主体性を手に入れたとき、どのように描写されるのか?という話ですけど、内田春菊オードリー・ヘプバーン的な「自分の力で生活を営み、自分の人生段階に応じて最適な男性をパートナーとして乗り換える」だったり、もしくは「自分の身体に挿入される≒自分を支配するペニスを否定するために、ペニスを切り取って自分のものとする」だったりするのかなと思います。

 

『それチン』では第1話で帰巣しようとしているペニスを無理に引き留めてペットとして飼う描写に、女性の性的な主体性→性的な男性がオブジェクトとして扱われることの構造が見て取れます。そしてそのペニスは高熱を出して寝込む。阿部洋一の描くペニスは従来のペニスの熱くて鉄のように固いイメージと違い、柔らかく、小さく、弱いものです。性的な主体性に欠けた男性。女性の意思に翻弄される男性。

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第2話では、「男性のペニスを切り取ってペットとして扱うこと」が社会的に少しずつ流行している描写が出てきました。もはやそこに人間としての男性は存在しません。添い寝フレンドのその先の世界です。

 

私たちは今、労働時間を切り売りして、日銭を稼いでいます。これも切断です。AirBnBで、使っていない間 自分の部屋に他人を泊めてお金を稼ぐこと、これも切断です。思えば、人類の最初の労働は売春でした。私たちの時間を、居住空間を、性的な私を切断して他人に提供することは避けられない流れなのかもしれません。

 

さて。せっかくなので、ペニスの切断史というか、切断されたペニスの表現史について、ひでシスと一緒におさらいしましょう。

 

意思を持って這うペニス

榎本俊二『えの素』

www.amazon.co.jp

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意思を持って這うペニスといえば、まずえの素でしょう。『これチン』で描かれていた、切断されたペニスの帰巣本能の描写も出てきます。榎本は天才です。

 

てる『ちん兄ちゃん』

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[R-18] 【漫画】「【創作R18】ちん兄ちゃん」漫画/てる [pixiv]

商業ではないですし、かつ切断ではなく人間が陰茎に変身する話ですが。ペニスになった主人公がディルドとして使われて萎びてしまう描写に興奮しました。

 

切断されたペニス

現実の世界ではラスプーチンの巨根展示阿部定事件不倫弁護士陰茎切断事件などがありますが、フィクションだとどうでしょうか。

x51.org

阿部定事件 - Wikipedia

gendai.ismedia.jp

師走の翁『精装追男姐』

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ぼくの一押しはこれです。

かわいい男の子がちんぽをイジメっ娘たちに切断されてしまう話です。切断されたペニスの間隔が本人と繋がっているリンク型です。さまざまにペニスが使われていく中で、ペニスに経験値が蓄積され、それが持ち主の手元に戻った時に驚くべき進化をもたらす。みたいな話でした。

ストーリーライン的にはやはり男性にペニスが戻ることで男性が強力な(性的な)主体性を取り戻す、という感じなんですが、それはまぁエロ漫画なので仕方ないかもしれません。

 

はらだ『ポジ』

薬を飲むとちんちんが取れて、搾乳機に入れられて「止めてくれ〜〜」ってなる漫画が収録されてました。ペニスが本人から切断されてモノとして扱われる中で、ペニス自身の本人に対する他者性がどのように暴かれるのかと期待して読んだんですが、そういう描写は薄かったですね。

 

ワープするペニス。どこにでも出現するペニス。

切断描写がなくてペニスが生えてくる系だとこっちです。AVだと飛び出る生チ○ポが人気の○○シリーズが有名でしょう。

 

かるま龍狼『非日常性バイアス』

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非日常性バイアス (バンブーコミックス COLORFUL SELECT)

アイディア賞です。ぼくもこういう特殊能力があれば、仕事中にオフィスで机の上にペニスをいっぱい生やして、林を作りたいですね。

 

magifuro蒟蒻『ちんちんを踏む話。』

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www.pixiv.netいや~よかったですね。足で踏むのはモノ扱いの中でも上級といった感じですので。magifuro蒟蒻氏はわかってます。ただペニスを自由に取り外して持って行けないところが残念でした。ただ生えてるだけだと、キノコ採集みたいな自然現象っぽさが出てしまうので。

 

最後に

ちょっとだけ宣伝します。ひでシス『愛根妄執』は事情により絶版状態にあります。今読めるひでシスのペニス漫画だと『月3万6千円の部屋には陰茎が住んでいた。』とかでしょうか。かなり古いですが。ペニスをいっぱい飼育するペットショップの話かとかも書きたいと思ってます。

 

今度の11月23日(祝)東京コミティアにて新しい本を出します。

女性の肉体にはペニスが存在しません。でもペニスの持っていない女性が性的な主体性を持ったら……。ネックレスやストッキングの線で分割されたその身体に、去勢されたペニスが現れることになります。私たちの時間を、居住空間を、性的な私を切断して他人に提供することは避けられない流れとなった世の中で、どのような生存戦略をとるのかが今 問われています。

 11月23日(祝)東京コミティア、スペースは「く28b」です。是非遊びに来てください。